前回糖尿病のお話の時に、インスリン抵抗性改善のために、いかに運動が重要性であると言うことについてお伝えさせていただきました。
今回は、運動を習慣化することで、心と体にどういった相互関係が生まれるのか、と言うことを、2回に分けて、お話しさせていただきます。
心と体の相互関係を取り扱う心身医療の分野では、心の健康は大いに運動と関係するという研究が次々となされています。
たとえばデューク大学の研究では、うつ病と診断された患者の大半にとって、週3回30分の運動を行うことは、抗うつ薬を服用するのと同じような効果があるという研究結果を示しました。
しかもいったん治療が終了してしまうと、薬物療法を行ったほうの患者は、運動療法を行った患者に比べ、4倍もの割合でうつ症状を再発しやすいというものです。(PMID:33913064)。
また、ハーバード大学の研究では
「ある意味、運動は夢のような治療法といえる。」とまで言っています。(PMID:31689000)
この論文では、運動は、うつ病に深く関連する不安やパニック障害、そしてストレス全般に効果があるということ、ひと汗かくことは、代表的な抗うつ薬である、リタリンなどを服用するようなもので、ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミンといった神経伝達物質の放出を正常に促し、心身を正常な状態にしてくれるとのことです。
そして運動には、自己評価や免疫力を高める、寿命を延ばす、さらにはよりよい睡眠が得られる、よりよい性生活を行えるといった、副次的効果があることも付け加えられています。
うつ病に悩んでいる場合、もしくはただ単にもっと幸せになりたいというだけの場合でも、この「運動する」という「驚異の薬」をもっと服用するべきなのです。
では、運動は抗うつ薬を服用するのと同じなのか、というとそうではありません。
もっと適切な言い方をすれば
「運動をしない」ことは「うつになる薬を服用しているのと同じもの」とも言えます。
人間は体を動かすように出来ています。
私たちは1日中コンピューターの前に座り続けたり、何日も会議を続けたりするようには出来ていないのです。