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スギ花粉症の舌下免疫療法

舌下(ぜっか)免疫療法は、舌の下にアレルゲン(アレルギーを起こす物質)を含む薬を投与し、アレルギーによって起こるつらい症状を改善する治療法です。
アレルギーに対する免疫を作り、少しずつ体質を改善していくため、治療には長い時間がかかりますが、アレルギーを根本から治すことができる治療として、近年大きな注目を集めています。

日本国内の花粉症患者は年々増加しています。その中でも最も多いものがスギによる花粉症であり、今や日本人の3人に1人がスギ花粉症を発症しているとも言われています。
毎年、花粉によるつらい症状に悩まされ、仕事や生活に支障をきたしている方はもちろん、従来のアレルギー治療では思ったような効果が得られない方などはぜひ当院にご相談下さい。

舌下(ぜっか)免疫療法とは

舌下免疫療法は、「アレルゲン免疫療法(減感作療法)」とも呼ばれ、アレルギーの元になる原因物質(アレルゲン)を少量ずつ投与して体を慣らし、アレルギー症状を改善する治療です。
アレルギーに対する免疫療法は古くから行われており、かつては注射で薬を投与する「皮下免疫療法」が主流でしたが、現在では舌の下に薬剤を投与する「舌下免疫療法」が登場したことで、より手軽に治療を行うことが可能になりました。

舌下免疫療法は、一時的に症状を抑える対症療法とは異なり、アレルゲンに対する免疫反応自体を起こりにくくするのが特徴であり、鼻水・鼻づまりといった鼻炎症状だけでなく、目の充血や皮膚のかゆみなど、アレルゲンによって起こる症状全般を減らす効果が期待できます。
即効性は期待できませんが、適切な治療で体質が改善されると、花粉症を完治または寛解(かんかい:長期間症状が出なくなること)させることが可能です。
また、完全には症状を抑えられない場合でも、症状が軽快することで薬の量を減らしたり、服用期間を短くしたりできるケースが多く、過剰な免疫反応が抑えられることで、将来、別の花粉などに感作(アレルギー反応を起こすこと)を起こしにくくする効果も期待できます。

舌下免疫療法は花粉症やダニアレルギーの治療に用いられており、当院ではおもに「シダキュア」という薬剤を用いたスギ花粉症の治療を実施しています。
スギ花粉症の舌下免疫療法は、健康保険が適用されるので、保険診療で受けられるのが大きなメリットです。また、当初12歳以上が治療対象とされていましたが、2018年にその範囲が引き下げられ、今では小児(5歳位~)の治療も可能になり、より幅広い年代の方に治療を受けていただけるようになっています。
※治療の効果には個人差があり、全ての患者さまに効果が期待できるものではありません。

スギ花粉症の舌下免疫療法が適している人

  • 中等度以上のスギ花粉症による症状にお悩みの方
  • 一般的な花粉症の治療で十分な効果が得られない方
  • 職業ドライバーなど、抗アレルギー薬の副作用(眠気)で仕事や生活に支障をきたす方
  • 対症療法ではなく、体質改善を目指し長期の治療を継続できる方
  • 花粉症治療薬の量を減らしたい方
  • 自宅で毎日の服用が可能であり、決められた期間ごとに通院できる方

「シダキュア」について

「シダキュア」は、スギ花粉を原料としたエキスを含む、スギ花粉症専用のアレルゲン免疫療法薬です。口の中の粘膜には、アレルギー反応を抑える働きに関連する免疫細胞がおり、薬の成分を口の中に留めてしっかり作用させるために「舌下投与(薬を舌の下に保持する)」を行うのが大きな特徴です。

シダキュアを毎日少量ずつ服用していると、体内にスギ花粉に対する免疫が作られてアレルギー反応を起こしにくくなるため、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、涙目、皮膚のかゆみといったアレルギーによる不快な症状を消失または軽減し、患者さまの生活の質(QOL)を高めることが可能です。

シダキュアには、成分の含有量が少ない「2,000JAU錠」と含有量が多い「5,000JAU錠」の2種類があり、始めは2,000JAU錠からスタートし、徐々に体に慣らしていきます。
治療は、1日1回1錠の服用を3年以上継続することが推奨されています。治療期間中は、患者さまご自身が薬剤を管理し、毎日ご自宅で投与を行うことになるため、薬の特徴や正しい使用方法を十分ご理解いただいき、治療を進めていくことが重要です。
※シダキュアは「シダトレン(2021年3月31日販売中止)」の後続薬です。
シダトレンを内服されている患者さまはお早めにご相談下さい。

舌下免疫療法の流れと服用方法

スギ花粉症の舌下免疫療法は以下のような流れで行います。

治療前の確認(アレルギー検査)

治療を行うためにはスギ花粉症によるアレルギーの確定診断を受ける必要があります。
採血によるアレルギー検査を行い、スギ花粉症であることが確定すれば治療を開始します。

治療開始初回~7日目

初回の治療はクリニックで行います。
初日~7日目までは含有量の少ない「2,000JAU錠」を使用します。
舌下錠を舌の下に入れます。吸湿性が高く柔らかい錠剤のため、唾液で溶けて無くなりますが、すぐに唾液を飲み込まずに1分間はそのまま舌の下で保持します。
服用後は30分程度クリニック内で体調を観察し、体調などに特別な変化がないことを確認してからご帰宅いただきます。2日目~7日目は、ご自宅で「2,000JAU錠」の投与を行います。

治療開始8日目以降~

7日目までに強い副作用が起こらなければ、8日目から含有量の多い「5,000JAU錠」に変更します。服用して特に大きな副作用が出なければ、次の日以降も同様に投与を続けていきます。
治療期間は個人差もありますが、3年以上~5年が目安です。その間、体調の変化や効果の有無を確認するために、1か月に1回の定期的な受診が必要です。

シダキュア服用に関する注意

  • スギ花粉症の舌下免疫療法は、スギ花粉の飛散時期には治療を始めることができません。初回の治療は、スギ花粉の飛散していない5月~12月の間に開始します。 (※初回のみ。2年目以降は花粉の飛散時期も継続して治療を行います。)
  • 服用後は薬剤の効果を得るため、5分間程度うがいや飲食を避けてください。
  • 副作用のリスクが高まるため、服用の前後2時間は激しい運動や飲酒、入浴などの血圧や血流の変動を伴う行動は避けましょう。
  • 薬剤の用法・容量は成人も小児も同じです。ただし、小さなお子さまが治療を受けられる場合、保護者の方が正しく服用できたことを確認する必要があります。

副作用について

シダキュアを服用後、含有する花粉の成分により副作用が起こる可能性があります。
特に治療開始直後やスギ花粉の飛散が多い時期に副作用が起こりやすくなります。
おもな副作用は、口の中の腫れやかゆみ、喉の刺激感や不快感など、投与部位である口の中に関連して起こる局所的な症状で、多くの場合はそのまま治療を継続することが可能です。

また、稀ではありますが重大な副作用として全身性の「アレルギー反応(ショック、アナフィラキシーなど)」が起こる可能性があります。アナフィラキシーとは、医薬品などに対する急性の過敏反応のことで、その多くは服用後30分以内に起こるのが特徴です。中には緊急性が高く、命に関わるようなケースもあるため、呼吸困難や脈の異常、血圧の急な低下、さらに意識がなくなるような場合には、すぐに救急車を呼ぶなど迅速な対応が必要です。

おもなアナフィラキシー症状

皮膚:じんましん、皮膚のかゆみ、皮膚の赤みなどが全身に見られる
消化器:胃の痛み、吐き気、嘔吐、下痢など
眼:視覚異常、視野が狭くなるなど
呼吸器:声が枯れる、咳、呼吸困難、くしゃみ、鼻づまり、喉のかゆみ、胸の締め付け感、呼吸がゼーゼー・ヒューヒューする、チアノーゼ(血液中の酸素不足により皮膚や粘膜が青紫色に変化すること)など
循環器:脈が速くなる、脈が乱れる、血圧が低下する(ふらつき、めまい)
神経:不安、恐怖、意識が無くなるなど

日常生活の注意

シダキュアの治療中は、アレルゲンを寄せ付けない生活をすることが大切です。
特にスギ花粉の飛散時期は、服用後にアレルギー反応が起こりやすくなります。常に花粉の飛散状況に注意を払うとともに、以下のような点に気を付けてできるだけ花粉を回避しましょう。

スギ花粉のおもな回避方法

  • 外出時にマスクやメガネ、花粉の付きにくい服を着る(ツルツルした素材など)
  • 帰宅時、部屋に入る前に身体に付いた花粉をよく払う
  • 帰宅後、鼻をかみ、うがいや洗顔をする
  • 窓や戸を開けっぱなしにしない
  • 洗濯物は外ではなく、室内に干す
  • こまめに部屋を掃除する

舌下免疫療法を受けられない人・注意が必要な人

シダキュアは、スギ花粉専用の薬のため、スギ以外の花粉症の方は治療の対象外となりますのでご注意ください。また、重い気管支喘息を患っている方や過去にシダキュアを使用してショックを起こしたことのある方も治療を受けることができません。
その他、以下のような条件に当てはまる方は治療に際し、注意が必要です。治療前に必ず医師にご相談下さい。

シダキュアの使用に際し、注意が必要な方

  • アレルゲンを使った治療や検査、またはスギ花粉を含む食物でアレルギー症状が出たことがある方
  • 気管支喘息の方
  • 高齢の方
  • 妊婦または授乳中の方
  • 抜歯後または口内の手術後の方、その他口の中の傷や炎症がある方
  • 重症の心疾患、肺疾患、高血圧症がある方
  • 他のアレルゲン免疫療法を受けている方
  • 服用中の薬がある方(非選択的β遮断薬、三環形抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(MAOI)など)
  • 全身性ステロイド薬の投与を受けている方
  • スギ花粉以外のアレルゲンに強い反応が出る方

よくある質問 -Q&A-

舌下免疫療法以外に花粉症を根本から改善するための治療はありますか?

当院では、花粉症の治療に栄養療法や腸内環境を整える治療を取り入れています。
栄養療法は、身体の細胞を分子レベルで捉えて不足する栄養素を補い、身体に備わった自然治癒力を最大限に引き出すことで、身体の不調を改善していく治療です。
また、腸には多くの免疫細胞が集まっており、腸内環境の乱れは、花粉症を始めとする慢性的なアレルギーの原因になります。当院では詳しい検査で腸内の状態を調べ、腸内環境を整えていくことで、花粉症の根本的な改善を目指します。
さらに詳しい情報をお知りになりたい方は、以下のページをご覧ください。
栄養療法外来(オーソモレキュラー療法)
広範囲便検査(CSA検査)
GI-MAP(新しい便検査)

舌下免疫療法の効果はいつ頃から実感できますか?大人と子供で効果に差はありますか?

正しく治療を行った場合、治療を開始した最初のスギ花粉飛散シーズンから改善効果が期待できますが、長く続けることでより効果を高めることが可能です。当院では成人の患者さまの割合が多いですが、お子さまの場合でも効果に違いはありませんのでお気軽にご相談下さい。

飲み忘れに気付いた時はどうしたら良いですか?

当日中に飲み忘れに気付いた時は、その日の分の薬を服用してください。翌日に気付いた時は前日の分を服用してください。服用したか忘れてしまった時は、服用しないようにしましょう。
いずれにしてもその日の分より多く服用することがないように気を付けてください。

シダキュアはいつ服用すると良いですか?

当院の場合、起床時に服用される方が多いようです。ご自身の都合の良いタイミングで構いませんが、副作用が出た場合を考え、対応しやすい日中(朝や昼)の服用をおすすめします。
いずれにしても飲み忘れを防ぐため、毎日同じ時間に服用する習慣を付けることが大切です。

アクアメディカルクリニック院長、寺田武史医師よりひとこと

寺田院長

シダキュアによる舌下免疫療法は、体を少しずつスギ花粉に慣らしていくことで、根本的な体質改善が期待できる治療法です。また、舌下免疫療法は保険診療ですので、検査・治療ともに保険適応となります。

アクアメディカルクリニックでは、スギ花粉症でお困りの患者様お一人お一人に合った治療法をご提案します。気になる点やご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

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