当院にはアトピー性皮膚炎の治療を希望される方が、たくさんいらっしゃいます。漢方治療を希望される方もいらっしゃいますが、ほとんどが既存の治療で改善せず、分子栄養学的アプローチを望まれる患者さんです。
私が考えるアトピー性皮膚炎の治療アプローチは
- 腸内環境改善
- 炎症の抑制と
- 皮膚のバリア機能の正常化です。
1)腸内環境改善
脳を持たない動物は存在するが、腸を持たない動物は存在しません。我々人類を含む動物にとって腸は食物からエネルギーや栄養成分を吸収するきわめて重要な器官です。
その一方で、腸は生体と外界とのインターフェースとして、多くの外来抗原に絶えず暴露されており、常に外来の微生物やウィルス攻防の最前線として戦い続けなくてはなりません。
腸には免疫細胞の約6~7割が集中しているほか、神経系や内分泌細胞も点在しています。これを腸エコシステムと呼び、腸機能だけでなく全身の恒常性を保つのに重要な役割を果たしています。
外部からの様々な刺激やストレス、あるいは宿主の加齢などによりそのバランスが一度崩れると、消化器疾患のみならず、自己免疫疾患や生活習慣病などの全身性疾患を発症します。 そしてアトピー性皮膚炎も、腸内環境が大きく関係しています。
腸内環境が悪化すると、小腸壁の細胞と細胞の間に分子レベルの隙間ができ、本来小腸壁を通過できない異物(菌・ウィルス・アレルギー物質など)がすり抜けて、血管内や体内に漏れ出してしまいます。そして体の免疫機能が異常反応を示し、アレルギー症状を発生させわけです。これをリーキーガット症候群といい、アトピー性皮膚炎の原因となるわけです。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、便秘、下痢、緊張するとお腹が痛くなる、オナラが臭いなどの腹部症状を訴える人がほとんどです。
我々が健康維持するための、腸エコシステムを維持するためにはどうしたら良いでしょうか?
それは簡単なことではありませんが、一つはヒトにとって有用な乳酸菌やビフィズス菌などの「プロバイオティクス」やオリゴ糖のような「プレバイオティクス」を摂取することがあげられます。
プロバイオティクスとはヒトにとって有益な効果を持つ細菌やそれを含む食品のことで
プロバイオティクスの腸管内での増殖を促すものをプレバイオティクスといいます。
腸内細菌叢は加齢に伴って変化し、いわゆる善玉菌が減少していくことからも腸内環境を乱さないような努力とプロバイオティクスを活用し、腸エコシステムの構築で我々の健康を維持するように心がけてください。