やっと一段落と言ったところですが、毎日暑い日が続いていましたね。
こういう中でも冷房など、一年中「冷え」に悩まされる方も多いと思います。
西洋医学では冷え性が問題にされる事は少ないですが
漢方医学においては「冷え症」と病名がつくように
冷えの有無が治療上の重要なポイントになります。
冷えを改善することで
同時に月経不順、肩こり、頭痛、腰痛、下痢、便秘、頻尿、不眠、易疲労など
様々な症状も改善されることが多く
その意味においても、「冷え症」の治療は重視されています。
今回は「冷え症」の話です。
冷え症治療のポイントとして、漢方では
「気を巡らせ」「滞った血を改善させ」「血を巡らせ」「水をさばく」事で
冷えを改善させます。
1)新陳代謝低下型(気虚や腎虚の状態)
新陳代謝が低下して熱産生が低いタイプで、
疲れやすい、食欲がない、風邪を引きやすい
もともと寒がりで冷房が苦手、温かい物を好む方です。
◎ 冷え症があり、他に胃腸が弱い → 人参湯、六君子湯
下痢しやすい → 真武湯
腰痛、頻尿がある → 牛車腎気丸
疲れやすい、風邪ひきやすい → 補中益気湯、十全大補湯
2)血流障害型(瘀血、血虚の状態)
血液の循環が悪いタイプで、顔色が悪い、口唇や歯肉の色が悪い
指先やかかとが荒れやすい、便秘気味の方です。
◎冷え症があり、他に下腹部痛、しもやけが出やすい → 当帰四逆加呉茱萸生姜湯
月経痛やむくみがある → 当帰芍薬散
便秘、イライラがある → 加味逍遙散
より血虚が強い場合 → 温経湯
より瘀血が強い場合 → 桂枝伏苓丸、桃核承気湯
3)水分貯留型(水毒の状態)
水分代謝が悪く、むくみやすい冷えのタイプで
めまい、耳鳴り、尿が近い、下痢、頭痛、頭思感がある方などです。
◎冷え症があり、他にむくみやすい → 五苓散、防巳黄耆湯
頭重感、めまい → 半夏下白朮天麻湯
のぼせ、めまい、耳鳴り → 苓桂朮甘湯
下痢、立ちくらみ → 真武湯
4)ストレス関与型(現代的に特徴的な冷え)
冷えに加えて、眠れない、イライラする、怒りっぽい
落ち込みやすい、憂うつなどの症状がある方です。
◎ 柴胡加竜骨牡蛎湯、抑肝散 などが効果的です。
4)その他(冷房病、冷蔵庫病)
◎冷房病:冷房により身体が冷え、汗が出ず、皮下に水分が溜まってだるくなる状態
→これに適するのが五積散で身体全体が温まり、尿量も増え、むくみもとれる
◎冷蔵庫病:かき氷やアイスクリームなどの冷飲食の過度の摂取で、お腹が冷えた状態
→人参湯はお腹を温め、冷えて腹痛を起こしている場合は大建中湯が適しています。
「冷え症」といってもこれだけの漢方の処方があるわけです。
あらためて漢方は凄いと思いますね。
私は身体の中心から寒い→真武湯
手足末端が寒い→当帰四逆加呉茱萸生姜湯 の組み合わせを使うことが多いですね。