消化器内科

慢性胃炎の原因の約8~9割はピロリ菌の感染だと言われていますが、実は検査をしてもピロリ菌が見つからないことがあります。

この記事では、ピロリ菌がいない慢性胃炎で考えられる原因、検査結果を見るときの注意点、胃がんリスク、受診や胃カメラを検討した方がよいケースについて詳しく解説します。



結論|ピロリ菌がいなくても慢性胃炎と診断されることはあります

慢性胃炎の女性のイメージ画像

慢性胃炎の原因として最もよく知られているのは「ヘリコバクター・ピロリ菌」です。
ピロリ菌は胃に長く住み着き、胃の慢性的な炎症や委縮を引き起こします。
ピロリ菌に感染すると、ほぼ100%の確率で慢性胃炎になります。

一方で、慢性胃炎のすべてがピロリ菌によるものとは限りません。
例えば、過去にピロリ菌がいて除菌した後でも、胃粘膜の萎縮や腸上皮化生が残っている場合があります。
また、胃粘膜の萎縮が進むと、ピロリ菌が住みつきにくくなり、検査では陰性に見えることもあります。

さらに、自己免疫性胃炎、薬剤による胃障害、胆汁逆流、アルコール、喫煙、まれな特殊型胃炎など、ピロリ菌以外の原因で慢性的な胃粘膜の変化が起こることもあります。



慢性胃炎とはどのような状態か


慢性胃炎とは、胃の粘膜に炎症が長く続いている状態を指します。
ただし、実際の診療では「慢性胃炎」という言葉がやや広い意味合いで使用されることがあります。

胃カメラで粘膜の赤みやむくみ、萎縮などを見て慢性胃炎と説明されることもあれば、病理検査で胃粘膜の炎症細胞を確認して診断されることもあります。
健康診断のバリウム検査では、胃粘膜のひだや形の変化から「慢性胃炎疑い」と判定されることもあります。

詳しくは以下のページもご覧ください。
慢性胃炎


慢性胃炎と萎縮性胃炎の違い

慢性胃炎の中でも特に重要なのが、萎縮性胃炎です。
萎縮性胃炎は、胃の長期間の炎症によって胃粘膜が薄くなり、胃酸や消化に関わる働きが低下している状態です。

慢性胃炎が「胃の炎症が続いている状態」だとすると、萎縮性胃炎は「胃の炎症が長く続いた結果、胃粘膜の構造に変化が出ている状態」と考えるとわかりやすいでしょう。

胃の萎縮があるかどうかは、胃がんリスクを考えるうえでも重要です。
ピロリ菌が現在いるかどうかだけでなく、胃粘膜に萎縮や腸上皮化生があるかどうかを確認することが、今後の検査方針を考える手がかりになります。


症状の強さと胃粘膜の状態は必ずしも一致しない

症状がないからといって、胃粘膜に何も起こっていないとは限りません。
慢性胃炎や萎縮性胃炎を発症していても、ほとんど自覚症状がない方もいます。

反対に、胃カメラで大きな異常が見つからなくても、胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの不快感が続くことがあります。
この場合は、機能性ディスペプシアなど、胃の動きや知覚過敏が関係する病気を考えることもあります。

胃の症状は、粘膜の見た目だけで単純に説明できないことがあります。
だからこそ、検査結果、症状、薬の使用歴、生活習慣を総合的に見ていく必要があります。



そもそも「ピロリ菌」とは何なのか


ピロリ菌は、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」と呼ばれる細菌で、人の胃の粘膜に住み着くことがあります。
胃の中は強い酸性の環境ですが、ピロリ菌は胃酸から身を守る仕組みを持っているため、長期間の感染が続くことがあります。

感染経路としては、井戸水の経口摂取が考えられていますが、未だはっきりとしていません。
感染者は60歳以上の方に多く見られます。

ピロリ菌に感染すると、胃粘膜に慢性的な炎症が起こり、慢性胃炎や萎縮性胃炎の原因になることがあります。
また、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の90〜100%がピロリ菌に感染しており、胃がんの方もほぼピロリ菌に感染しているとされています。

しかし、ピロリ菌に感染していても自覚症状がない方は少なくありません。
そのため、胃の不調がある方だけではなく、健康診断で慢性胃炎や萎縮性胃炎を指摘された方も、必要に応じてピロリ菌検査や胃カメラ検査を検討することが大切です。



ピロリ菌がいないのに慢性胃炎と言われる主な理由


ピロリ菌がいない慢性胃炎には、いくつかのパターンがあります。
ここを分けて考えると、自分がどの状況に近いのか整理しやすくなります。


1:検査では陰性でも、実はピロリ菌が隠れているケース

ピロリ菌検査は非常に有用ですが、どの検査も100%正しいわけではありません。
日本ヘリコバクター学会も、検査の選択や結果の解釈は医師に相談する必要があるとしています。

特に、胃酸を抑える薬を飲んでいる方、最近抗菌薬を使った方、過去に除菌治療を受けた方は、実際は陽性にも関わらず、検査結果が陰性となる「偽陰性」が起こることがあります。

例えば、尿素呼気試験や便中抗原検査は、現在のピロリ菌感染を調べるうえで精度の高い検査ですが、PPIやP-CABと呼ばれる胃酸を抑える薬、抗菌薬、ビスマス製剤などの影響で偽陰性が起こることがあります。
なお、薬を中止するかどうかは自己判断せず、必ず医師に確認してください。


2:過去の感染や除菌後・自然消失後の変化が残っているケース

ピロリ菌に過去に感染していた場合、胃粘膜の萎縮や腸上皮化生が残ることがあります。

例えるなら、火事そのものは消えていても、壁や床に焦げ跡が残っているような状態です。
ピロリ菌という炎症の原因がなくなっても、胃粘膜の変化がすぐ完全に元通りになるとは限りません。

特に、長年ピロリ菌に感染していた方、50歳以上で初めて検査を受けた方、過去に除菌したあと胃カメラをしばらく受けていない方では、「今ピロリ菌に感染しているか」だけではなく「これまで胃にどの程度の変化が起きていたか」を確認することが大切です。


3:ピロリ菌以外の原因で胃粘膜に炎症が起きているケース

無症状の慢性胃炎の原因の一つが、自己免疫性胃炎です。
自己免疫性胃炎は、体の免疫が胃の壁細胞などを攻撃し、胃体部を中心に萎縮が進む病気です。
鉄欠乏、ビタミンB12欠乏、悪性貧血、自己免疫性甲状腺疾患などが関係していることがあります。

また、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アスピリンなどの痛み止めや抗血栓薬が胃粘膜に負担をかけることもあります。
頭痛や腰痛で市販薬をよく飲む方、整形外科で痛み止めを長く処方されている方、心臓や脳血管の病気で血流をよくする薬を飲んでいる方は、薬剤性の胃障害も確認したいポイントです。

そのほか、胆汁が胃に逆流する胆汁逆流性胃炎、飲酒・喫煙・強いストレス・食生活の乱れといった生活習慣の乱れによる胃炎、好酸球性胃炎やリンパ球性胃炎などの特殊な胃炎が関係する場合もあります。
症状が長引く場合や通常の治療で改善しない場合は、こうした原因まで視野に入れる必要があります。


胃の症状が続くときに考えられる、慢性胃炎以外の病気

胃もたれ、みぞおちの痛み、吐き気、胸やけなどが続いている場合、慢性胃炎以外の病気が隠れていることもあります。

特に、胃カメラで明らかな潰瘍やがんなどが見つからないのに、胃もたれ、早期満腹感、みぞおちの痛み、焼けるような不快感が続く場合は、機能性ディスペプシアの可能性も考えられます。

機能性ディスペプシアは、胃に異常がないにも関わらず、胃の動き、胃酸、知覚過敏、ストレス、生活リズムなど複数の要因により、みぞおちの痛みや胃の不快感が続く病気です。
以前は「慢性胃炎」と説明されていた症状の一部が、現在では機能性ディスペプシアとして扱われることがあります。

また、胸やけ、酸っぱいものが上がってくる感じ、げっぷ、喉の違和感が強い場合は、逆流性食道炎や胃食道逆流症が関係することもあります。

市販薬で一時的に楽になっても、症状が繰り返す場合は、胃カメラや診察で原因を整理することをおすすめします。



ピロリ菌がいない慢性胃炎の治療方法


ピロリ菌が本当に陰性であれば、ピロリ菌の除菌治療は基本的に行いません。
根本的な原因に合わせた治療を行います。


原因に合わせて薬物療法・検査・生活改善を組み合わせる

胃痛や胃もたれがある場合は、胃酸を抑える薬、胃粘膜を保護する薬、胃の動きを整える薬などを症状に合わせて使うことがあります。

現在服用中の痛み止めやアスピリンなどが原因として疑われる場合は、薬の種類や飲み方を見直すことがあります。ただし、心臓や脳血管の病気で抗血栓薬を飲んでいる方は、自己判断で中止してはいけません。必ず主治医と相談してください。

併せて、食生活の乱れといった生活習慣も見直していきます。
特に、食べすぎ、早食い、夜遅い食事、過度な飲酒、脂っこい食事、刺激物の摂りすぎには注意が必要です
なお、コーヒーなどは人によって症状を悪化させることがありますが、自分の症状と照らし合わせて調整するのが現実的な方法と言えるでしょう。

また、「胃に良い」とされる食品だけで慢性胃炎を治そうとするのはおすすめできません。
例えばヨーグルトや発酵食品を取り入れること自体は悪くありませんが、ピロリ菌感染や萎縮性胃炎、胃がんリスクの確認の代わりにはなりません。


自己免疫性胃炎では鉄・ビタミンB12の摂取も重要

自己免疫性胃炎の場合は、根本的な治療が難しいとされています。
しかし放置していると、胃炎に併せて悪性貧血などを起こす可能性があるため、ビタミンB12の注射や経口投与、鉄剤の摂取などを行います。



医療機関の受診や胃カメラを検討した方がよいケース


次のような方は、健康診断などでピロリ菌が陰性であっても、一度医療機関に相談することをおすすめします。

  • 健康診断で慢性胃炎、萎縮性胃炎、胃炎疑いを指摘された
  • 過去にピロリ菌除菌をしたが、その後胃カメラを受けていない
  • 胃もたれ、みぞおちの痛み、吐き気、胸やけが続いている
  • 家族に胃がんになった人がいる
  • 50歳以上で胃カメラをしばらく受けていない
  • 黒い便、吐血、貧血、体重減少、食欲低下がある
  • 痛み止め、アスピリン、抗血栓薬を長く使っている

特に、黒い便や吐血、原因不明の貧血、体重減少がある場合は、早めの受診が必要です。



江東区・亀戸・押上の慢性胃炎のご相談はアクアメディカルクリニックへ


慢性胃炎なのにピロリ菌がいないと言われた場合、考えられる状況はひとつではありません。
本当に未感染で胃が比較的きれいな状態の方もいれば、過去のピロリ菌感染や除菌後の変化が残っている方、偽陰性の方、自己免疫性胃炎や薬剤性胃障害が隠れている方もいます。

大切なのは、「ピロリ菌陰性」という言葉だけで判断しないことです。
胃カメラで萎縮や腸上皮化生があるか、過去に感染していた可能性があるか、薬や生活習慣の影響がないかをなど確認することで、必要な治療や経過観察が見えてきます。

当院・アクアメディカルクリニックでは、慢性胃炎を指摘された方や、ピロリ菌感染が心配な方、胃もたれ・胃痛・みぞおちの不快感などが続いている方の診察に対応しています。

ピロリ菌検査が陰性でも、胃粘膜の萎縮、過去の感染歴、薬の影響、胃潰瘍やポリープなど、確認しておきたいポイントがあります。
そのため当院では、症状や健診結果、これまでの検査歴をふまえて、必要に応じてピロリ菌の再検査や胃カメラ検査をご案内しています。

当院のピロリ菌検査では、呼気による「尿素呼気試験」を行っており、当日中に検査結果をご説明します。
必要であれば直ちに除菌治療を開始いただけます。

また、胃カメラ検査では、極細のスコープを鼻から挿入する「苦痛の少ない胃カメラ検査」を行っています。
「胃カメラはつらそうで不安」「以前の検査が苦しかった」という方も、まずはご相談ください。

ピロリ菌検査・胃カメラ検査については以下のページでもご説明しています。
ピロリ菌検査
胃カメラ検査

江東区・亀戸・押上・錦糸町周辺で、慢性胃炎やピロリ菌検査、胃カメラ検査について相談したい方は、アクアメディカルクリニックへお気軽にご相談ください。