「ストレスがたまると胃が痛くなる」「忙しい時期だけ胃もたれが続く」。そんな経験から、慢性胃炎はストレスが原因なのではないかと感じている方も多いのではないでしょうか。
実際、ストレスは胃の働きや痛みの感じ方に影響を及ぼし、胃痛・胃もたれ・吐き気などの症状を悪化させることがあります。
ただし、慢性胃炎の背景にはピロリ菌感染や胃粘膜の萎縮などが関係していることもあるため、「ストレスのせい」と自己判断してしまうのは注意が必要です。
この記事では、慢性胃炎とストレスの関係、いわゆるストレス性胃炎との違い、受診した方がよいサインについてわかりやすく解説します。胃の不調が続いている方は、ご自身の症状を整理しながら読み進めてみてください。
そもそも慢性胃炎とはどんな状態か

慢性胃炎とは、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こっている状態です。
急性胃炎のように急に強い痛みや吐き気が出る場合もありますが、慢性胃炎では症状がはっきりしないことも多く、健康診断や胃カメラで初めて指摘される方もいます。
症状としては、みぞおちの痛み、胃もたれ、胸やけ、吐き気、食欲低下、食後の不快感などがあります。
ただし、慢性胃炎があっても無症状の方もいますし、逆に強い胃痛があっても胃カメラで明らかな炎症が見つからない方もいます。ここが胃の病気の少し難しいところです。
慢性胃炎の原因や検査、治療について詳しく知りたい方は、以下のページもあわせてご覧ください。
▷慢性胃炎
慢性胃炎とストレスの関係

「仕事が忙しくなると胃が痛い」「人間関係で悩むと胃もたれが続く」「検査では大きな異常がないのに、緊張するとみぞおちが重くなる」。このような経験があると、「慢性胃炎はストレスが原因なのでは?」と考える方は少なくありません。
結論からいうと、ストレスは慢性胃炎の主な原因そのものというより、胃の不快感や痛みを強める要因であることが多いです。
例えば、普段なら気にならない程度の胃の張りを強く不快に感じたり、食後の胃もたれが長く続くように感じたりします。
慢性胃炎の代表的な原因としては、ピロリ菌感染、薬剤、自己免疫、生活習慣などが知られています。
一方で、ストレスによって自律神経の働きが乱れると、胃酸分泌、胃の動き、胃粘膜の血流、痛みの感じ方などに影響が出るため、慢性胃炎の症状が悪化しやすくなります。
つまり、「慢性胃炎=ストレスだけで起こる病気」と考えるのは正確ではありません。
「ストレスは胃に少なからず影響を及ぼす」と考えるのが現実的です。
大切なのは、ストレスによる胃の不調と、胃粘膜に実際に炎症や萎縮がある慢性胃炎を混同しないことです。
ストレスで胃の不調が起こる仕組み
胃は、自律神経やホルモン、脳からの信号の影響を受けながら働いています。そのため、強い緊張や不安、睡眠不足、過労が続くと、胃の働きも乱れやすくなります。
特に注意したいのが自律神経の乱れです。
自律神経には、体を活動モードにする交感神経と、休息・消化モードに関わる副交感神経があります。
ストレスがかかると交感神経が優位になり、胃腸の動きや血流が変化したり、胃酸が過剰に分泌されたりします。
その結果、食べ物が胃に長く残って胃もたれを感じたり、胃の動きが乱れて張りや吐き気を感じたりすることがあります。また、胃酸と胃粘膜を守る防御機能のバランスが崩れると、胃の痛みや不快感につながることもあります。
慢性胃炎と「ストレス性胃炎」は何が違うのか

「ストレス性胃炎」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。
ただし、厳密には「ストレス性胃炎」という病名が、慢性胃炎や胃潰瘍のように明確な診断名として使われているわけではありません。
一般的に「ストレスで胃が痛い」「緊張すると胃もたれが出る」といった状態は、医学的には「機能性ディスペプシア」として整理されることがあります。
機能性ディスペプシアとは、胃もたれ、みぞおちの痛み、食後の膨満感、早期満腹感などが続いているにも関わらず、胃カメラなどの検査では潰瘍・がん・強い炎症などの変化や異常が見つからない状態を指します。
代表的な症状は、食後の胃もたれ、少量で満腹になる感じ、みぞおちの痛み、焼けるような不快感です。
日本消化器病学会の機能性ディスペプシア診療ガイドラインでは、機能性ディスペプシアの病態には胃や十二指腸の運動異常、内臓知覚過敏、心理社会的因子、胃酸、生活習慣など複数の要素が関わるとされています。
つまり、ストレスだけが原因というより、胃の動きの低下、生活習慣、ストレスによる自律神経の乱れなどが重なって症状が出ると考える方が実態に近いです。
一方、慢性胃炎は、胃の粘膜に慢性的な炎症や萎縮などの変化がある状態です。
慢性胃炎とストレス性胃炎(機能性ディスペプシア)には、「胃に何らかの変化や異常があるかどうか」という大きな線引きがあるのです。
なお、英語圏の医学文献でいう「stress-related mucosal disease」は、重症外傷、熱傷、人工呼吸管理、凝固異常など、集中治療室で問題になる強い身体的ストレスによる胃粘膜障害を指すことがあります。日常生活の精神的ストレスによる胃痛とは別の概念です。
「ストレスっぽい胃痛」に隠れやすい病気

ストレスで胃が痛いと思っていたのに、実際は別の病気が隠れていた、というケースは少なくありません。
今回は代表的なものを6つご紹介します。
- 慢性胃炎
- 機能性ディスペプシア
- 胃・十二指腸潰瘍
- 逆流性食道炎
- 薬剤性消化管障害
- 胃がん
1:慢性胃炎
慢性胃炎では、胃粘膜に慢性的な炎症や萎縮がみられます。
慢性胃炎の多くの場合はピロリ菌に感染しており、放置すると萎縮性胃炎へ進むことがあります。
ストレスそのものが慢性胃炎の主な原因になるわけではありませんが、もともとある胃の不調を強く感じさせることがあります。
2:機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアでは、胃カメラなどで明らかな変化や異常が見つからないにも関わらず、胃痛や胃もたれなどの症状が続きます。
根本的な原因はまだ解明されていませんが、胃の動きの低下、生活習慣、ストレスによる自律神経の乱れなどが重なって起こると考えられています。
例えば「検査では異常がないと言われたのに、食後の胃もたれがつらい」「忙しい時期だけみぞおちが痛む」「緊張すると胃が重くなる」といった場合は、機能性ディスペプシアが関係している可能性があります。
異常がないから問題ない、という意味ではなく、胃の働きや感覚の問題として治療や生活改善を考えていく必要があります。
3:胃・十二指腸潰瘍
胃・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が深く傷ついた状態です。
主な原因として、ピロリ菌感染やNSAIDsと呼ばれる痛み止め、アスピリンなどが知られています。強いストレスや喫煙、飲酒、不規則な食生活などが症状の悪化に関わることもあります。
症状としては、みぞおちの痛み、胃もたれ、吐き気、胸やけ、食欲低下などがあります。空腹時に痛みが出る、食事をすると一時的に楽になる、夜間に痛みで目が覚めるといった訴えがみられることもあります。ただし、症状だけで胃炎や機能性ディスペプシアと見分けることは難しいです。
潰瘍から出血すると、黒い便、吐血、貧血、ふらつきなどが起こることがあります。このような症状がある場合は、早めの受診が必要です。市販の胃薬で一時的に痛みが軽くなっても、潰瘍が治ったとは限らないため、症状が続く場合は胃カメラで確認することが大切です。
4:逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流し、食道の粘膜に炎症を起こす病気です。
代表的な症状は、胸やけ、酸っぱいものが上がってくる感じ、げっぷ、喉の違和感、咳、声のかすれなどです。胃の痛みやみぞおちの不快感として感じる方もいるため、「胃炎」や「ストレスによる胃痛」と勘違いされることがあります。
逆流性食道炎は、食べすぎ、脂っこい食事、飲酒、喫煙、食後すぐ横になる習慣、肥満、姿勢などと関係します。ストレスが直接の原因とは限りませんが、食生活の乱れや睡眠不足と重なることで症状が出やすくなることがあります。
5:薬剤性消化管障害
薬剤性消化管障害は、薬の影響で胃や腸の粘膜に負担がかかり、胃痛、胃もたれ、胸やけ、吐き気、潰瘍、出血などが起こる状態です。
特に注意が必要なのは、NSAIDsと呼ばれる痛み止め、アスピリン、ステロイド、抗血栓薬などです。腰痛、頭痛、関節痛などで痛み止めをよく使う方は、胃の症状との関連を確認する必要があります。
薬剤性の胃障害は、必ずしも強い痛みを伴うとは限りません。軽い胃もたれ程度だったり、症状が乏しいまま潰瘍や出血が起こったりすることもあります。特に高齢の方、過去に胃潰瘍を起こしたことがある方、複数の薬を服用している方は注意が必要です。
なお、自己判断で薬を中止するのは危険なこともあるため、胃の不調で医療機関を受診する場合は、現在飲んでいる薬や市販薬、サプリメントも含めて医師に伝えましょう。
6:胃がん
胃がんは、早期には自覚症状がほとんどないことがあります。
症状が出る場合でも、胃の痛み、不快感、胸やけ、吐き気、食欲不振、胃もたれなど、胃炎や胃潰瘍、機能性ディスペプシアと似た症状になることがあり、症状だけで胃がんと判断することは困難です。
胃がんの発症には、ピロリ菌感染、萎縮性胃炎、喫煙、高塩分の食事などが関係するとされています。
特にピロリ菌感染による慢性胃炎や萎縮性胃炎を指摘されたことがある方は、定期的な検査について医師と相談することが大切です。
黒い便、吐血、貧血、体重減少、食欲低下、飲み込みにくさ、症状が徐々に強くなるといった場合は、早めの受診が必要です。「ストレスだから」「いつもの胃もたれだから」と放置せず、胃カメラなどで胃の状態を確認することが、早期発見につながります。
医療機関を受診した方がよいサイン

胃の不調が一時的で、食べすぎ、飲みすぎ、寝不足など明らかなきっかけがあり、数日で改善する場合は様子を見てもよいでしょう。
しかし、症状が続く場合や繰り返す場合は、消化器内科への相談をおすすめします。
早めに消化器内科へ相談したい症状
- 2週間以上、胃痛や胃もたれが続いている
- 胃の不調を何度も繰り返す
- 市販薬を飲むと一時的に良くなるが、服用をやめると症状が出る
- 食事量が減っている
- 吐き気や胸やけが続く
このような場合は、一度医療機関を受診することをおすすめします。
特に過去にピロリ菌の感染を指摘されたことがある方、健康診断で慢性胃炎や萎縮性胃炎を指摘された方、家族に胃がんの方がいる方も注意が必要です。
また、50歳以上で新しく胃の不調が出てきた場合も、一度検査を検討した方がよいケースがあります。
国の胃がん検診は50歳以上を対象に行われていますが、症状がある場合は検診を待つのではなく、医療機関を受診することが大切です。
黒い便・吐血・貧血・体重減少は放置しない
黒い便、吐血、貧血、急な体重減少、強い腹痛、飲み込みにくさ、食べ物がつかえる感じがある場合は、早めの受診が必要です。胃潰瘍などからの出血や、悪性疾患などを疑うきっかけになることがあります。
国立がん研究センターの情報でも、胃がんは早期には自覚症状が乏しく、進行しても症状がない場合があるとされています。気になるサインがある場合は先延ばしにしないことが大切です。
胃カメラ検査やピロリ菌検査で何がわかるのか

胃の不調により医療機関を受診した場合、胃カメラ検査やピロリ菌検査を行うことがあります。
胃カメラ検査では胃粘膜の状態を直接確認できます。
胃の炎症、萎縮、びらん、潰瘍、ポリープ、胃がんを疑う変化などを観察し、必要に応じて組織を採取して詳しく調べます。
また、前述の機能性ディスペプシアの診断にも胃カメラ検査が大いに役立ちます。
ピロリ菌検査は、その名の通りピロリ菌に感染していないかどうかを調べる検査です。
ピロリ菌は慢性胃炎や胃がんの代表的な原因とされているため、検査によって感染の有無を確認することはとても大切です。
検査方法には、尿素呼気試験、便中抗原検査、血液検査、内視鏡時に行う検査などがありますが、当院・アクアメディカルクリニックでは尿素呼気試験を採用しています。
胃カメラ検査やピロリ菌検査の詳細は、以下のページをご覧ください。
▷胃カメラ検査
▷ピロリ菌検査
胃の不調を軽くする生活の工夫

ストレスそのものを完全になくすことは難しいですが「ストレスによって胃にかかる負担」を減らす工夫はできます。
大切なのは、「気にしすぎないようにする」といった精神論ではなく、胃の動きや自律神経が乱れにくい生活条件を整えることです。
食事や睡眠の改善
まず見直したいのは、食事の量とタイミングです。
例えば、朝食を抜いて空腹のままコーヒーを飲む、昼食を短時間でかき込む、夜遅くに脂っこい食事をとる、といった習慣は、胃もたれや胸やけ、みぞおちの不快感を悪化させることがあります。
特に注意したいのは、早食い、食べすぎ、夜遅い食事、食後すぐ横になる習慣です。
胃に食べ物が残っている状態で横になると、胃酸が逆流しやすくなり、胸やけを起こすことがあります。夕食が遅くなる日は量を控えめにする、脂っこいものを避ける、食後すぐに寝ないようにするだけでも、胃への負担を減らしやすくなります。
また、カフェイン、アルコール、香辛料、脂質の多い食事も、人によっては症状を強めることがあります。
「空腹でコーヒーを飲むと胃が痛い」「飲酒の翌日は胃もたれが強い」「辛いものを食べると胸やけが出る」など、自分の胃が反応しやすいパターンを知ると、改善しやすくなります。
食事に加えて、睡眠不足も見逃せません。
寝不足が続くと自律神経が乱れやすくなり、胃の動きが乱れたり、修復機能が低下することがあります。
寝る2~3時間前は食事をしない、1日に最低6時間は眠るなど、睡眠不足の質と時間を意識しましょう。
症状日記をつけると診察で原因を整理しやすい
胃の症状は、診察室で説明しようとすると意外と思い出しにくいものです。
「いつから痛いですか?」「食前と食後のどちらで悪くなりますか?」「どんな食事で症状が出ますか?」と聞かれても、正確な説明が難しいことがあります。
そこで役に立つのが、簡単な症状日記です。
胃の症状が出たときに、その時間帯、食前か食後か、(食後であれば)食べたもの、睡眠時間、ストレスが強かった出来事、市販薬を飲んだか、便の色に変化があったかなどを、簡単にメモしておきましょう。
例えば「月曜の朝に胃が重い」「昼食を急いで食べた後に胃もたれする」「残業が続いた週にみぞおちが痛む」「コーヒーを2杯以上飲むと胸やけが出る」といった情報は、診察でとても役立ちます。
また、生活習慣や睡眠の問題点も自覚しやすくなります。
ストレスと胃炎に関してよくある質問

Q1:慢性胃炎はストレスだけでなりますか?
A:ストレスだけで慢性胃炎になると断定するのは正確ではありません。
慢性胃炎では、ピロリ菌感染など胃粘膜に慢性的な炎症を起こす原因が関係していることが多いです。
ただし、ストレスは自律神経を乱れさせ、胃の症状を悪化させる要因になります。
Q2:胃カメラで異常ないのに胃痛が続くことはありますか?
A:あります。胃カメラで潰瘍、がん、強い炎症などが見つからなくても、胃の不快な症状が続くことがあり、機能性ディスペプシアがその代表とされています。
「異常なし」と言われても、症状がつらい場合は我慢する必要はありません。
食事、睡眠、ストレス、薬の影響なども含めて、症状を軽くする方法を医師と相談しましょう。
Q4:市販の胃薬で様子を見てもよいですか?
A:軽い症状で短期間なら、市販薬で様子を見ることもあります。ただし、症状が長引く、繰り返す、食欲が落ちる、体重が減る、黒い便が出る、貧血を指摘された、といった場合は受診が必要です。
市販薬で一時的に症状が軽くなっても、根本的な原因が解決しているとは限りません。気になる症状が続く場合は、早めに消化器内科へ相談しましょう。
江東区・亀戸・錦糸町周辺で胃の不調が続く方はアクアメディカルクリニックへ

アクアメディカルクリニックでは、胃痛、胃もたれ、胸やけ、吐き気、食欲低下などの症状についてご相談いただけます。
ストレスが関係していそうな胃の不調でも、慢性胃炎、ピロリ菌感染、胃潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシアなどが背景にあることがあります。
また、胃がんは早期に症状が出にくいこともあるため、長引く胃の不調を「いつものこと」と放置しないことが大切です。
江東区・亀戸・錦糸町周辺で胃の症状が続いている方、過去に慢性胃炎やピロリ菌を指摘された方、しばらく胃カメラを受けていない方は、一度ご相談ください。
症状や年齢、既往歴に応じて、必要な検査や治療方針をご提案します。
