
慢性胃炎と診断された方や、慢性胃炎が疑われる方のなかには「何を食べればいいのか」「食べてはいけないものはあるのか」と不安になる方が少なくありません。
胃にやさしい食べ物としては、おかゆ、うどん、豆腐、白身魚、卵、よく煮た野菜などが紹介されることがあります。
これらは胃の調子が悪いときに取り入れやすい食品ですが、「慢性胃炎の人はそれだけを食べ続けなければいけない」という意味ではありません。
急性胃炎のように強い痛みや吐き気がある胃炎とは異なり、慢性胃炎では過度な食事制限が必要ないケースも多くあります。
大切なのは、胃への負担を減らしながら、必要な栄養をきちんと摂ることです。
この記事では、慢性胃炎のときに意識したい食事の基本、食べやすい食品、控えたい食品、具体的な食事メニュー、まで解説します。
慢性胃炎の食事は「治す」より「胃への負担を減らす」ためのもの

慢性胃炎の食事でまず知っておきたいのは、食事だけで慢性胃炎そのものを根本的に治せるとは限らないという点です。
慢性胃炎と食事の関係についての研究は行われていますが、特定の食品を「慢性胃炎を治す食べ物」としてすすめるには、まだ根拠が十分ではありません。
なお、米国国立衛生研究所・NIHの一部であるNIDDKは、胃炎・胃症において、食事や栄養が多くのケースの直接的な原因として大きな役割を持つわけではないと説明しています。
一方で、アルコール、食品アレルギー、サプリメントなどが一部の胃炎に影響を及ぼすことも分かっています。
また、ピロリ菌による慢性胃炎では、鉄分の吸収が妨げられて「鉄欠乏性貧血」が起こったり、自己免疫性胃炎では鉄分やビタミンB12の吸収が妨げられたりすることがあります。
つまり、慢性胃炎の食事療法は「食べ物で胃炎を治す方法」ではなく、「胃への刺激を減らし、症状を悪化させにくくし、栄養不足を防ぐための補助的な対策」と考えるのがよいでしょう。
特にピロリ菌感染や萎縮性胃炎がある場合は、食事の改善と並行して、検査や治療を受けることが大切です。
慢性胃炎のときに意識したい食事の基本

慢性胃炎の食事では、極端に食べるものを制限するよりも、胃の状態に合わせて調整することが大切です。
胃にやさしい食事は「温かい・やわらかい・低脂肪」が基本
胃の調子が悪いときは、温かく、やわらかく、脂肪が少ない食事を選ぶと、胃への負担を減らしやすくなります。
例えば以下のような食べ物は、胃もたれや吐き気があるときにも食べやすいでしょう。
- おかゆ
- うどん
- 豆腐
- 白身魚
- 卵
- 蒸し鶏
- よく煮た野菜
ただし、これらは「慢性胃炎の症状があるときに食べやすい食品」であり、「慢性胃炎の人が毎日これだけを食べるべき」という訳ではありません。
症状が落ち着いているときは、肉、魚、野菜、大豆製品などをバランスよく食べても問題がないことも多いです。
むしろ、おかゆやうどんだけの食事を長く続けると、たんぱく質、鉄、ビタミン、食物繊維などが不足しやすくなります。
慢性胃炎では、胃に負担をかけないことと同じくらい、栄養不足を防ぐことも意識しましょう。
食べる量・時間・スピードも胃への負担に関係する
慢性胃炎では、「何を食べるか」だけではなく「どう食べるか」も大切です。
意識したいポイントは以下の通りです。
- 腹八分目にする
- よく噛む
- 食事時間をなるべく毎日そろえる
- 寝る2〜3時間前までに食事を済ませる
- 空腹のまま濃いコーヒーやアルコールを飲まない
同じ食事内容でも、一度にたくさん食べる、短時間でかき込む、夜遅くに食べてすぐ横になる、といった食べ方は胃もたれや胸やけを起こしやすくなります。
これに関連した研究として、中国・北京の3つの病院で、2015年10月から2016年1月にかけて慢性胃炎患者526人を対象に行われた横断研究があります。この研究は2020年に医学誌へ掲載され、慢性胃炎患者の症状と食習慣の関連を調べたものです。
研究の結果、約58%の患者が「症状は食事要因と関係している」と感じていました。
食習慣では「早食い」が約53%、「不規則な食事時間」が約30%にみられ、特に胃痛や胃の張りなどの症状は、不規則な食事、外食、揚げ物・酸味の強いもの・甘いもの・塩辛いものの摂取などと関連していました。
この研究は観察研究であり、「その食べ方が慢性胃炎を必ず引き起こす」とまでは言えません。
ただ、症状を和らげる日常管理として、早食いを避ける、食事の時間を整える、食べすぎない、味の濃いものを控えるといった工夫には一定の意味があると考えられます。
慢性胃炎のときに食べやすいもの

慢性胃炎の食事では、症状が強い時期と落ち着いている時期で、食べ物の選び方を変えるのがおすすめです。
主食・たんぱく質・野菜の選び方
主食では、おかゆ、軟飯、うどん、そうめんなどが食べやすいでしょう。
胃もたれが強いときは、おかゆやうどんのように、やわらかく温かいものから始めるとよいでしょう。
たんぱく質では、豆腐、白身魚、鶏むね肉、ささみ、卵、脂身の少ない赤身肉などがおすすめです。
胃の調子が悪いときは主食だけで済ませたくなりますが、たんぱく質は体の修復や体力維持に必要です。
食べられる範囲で、毎食どれか1つ入れる意識を持つとよいでしょう。
野菜は、加熱したものの方が食べやすいことがあります。
にんじん、大根、かぼちゃ、じゃがいも、ほうれん草などを、煮る・蒸す・スープにするなどの調理法で取り入れると、胃への負担を抑えやすくなります。
果物では、バナナやりんごのすりおろしなどが比較的食べやすいと言えます。
ただし、柑橘類などの酸味の強いものは、胸やけの症状を強く感じることがあります。
ヨーグルト・牛乳・卵は体質に合わせて取り入れる
ヨーグルトや牛乳は、胃にやさしい食品として紹介されることがあります。
実際に問題なく食べられる方もいますが、人によっては胃もたれ、下痢、胃が張った感じが出ることもあります。
慢性胃炎の食事では、「体に良いと言われる食品を無理に食べる」よりも、「食べた後に自分の症状がどう変わるか」を見ることが大切です。
卵も、半熟卵や茶碗蒸しのような形であれば食べやすいことが多い食品です。
ただし、油を多く使った卵料理や、固ゆで卵で胃もたれする方もいます。調理法によって合う・合わないが変わるため、少量から試すとよいでしょう。
慢性胃炎で控えたい食べ物・飲み物

慢性胃炎では、すべての人に共通する「絶対に食べてはいけない食品」があるわけではありません。
大切なのは、症状が強い時期に胃を刺激しやすいものを控えることです。
脂っこいもの・刺激物・アルコールは症状を悪化させやすい
胃もたれや胃痛がある時期は、揚げ物、ラーメン、脂身の多い肉、ベーコン、ソーセージ、こってりした洋菓子などは控えめにしましょう。
脂質が多い食事は胃の中にとどまる時間が長くなり、胃もたれにつながりやすくなります。
香辛料の強い料理、唐辛子、濃いコーヒー、アルコール、炭酸飲料、熱すぎる飲み物も、胃の不快感を強めることがあります。
ただし、慢性胃炎だからといって、これらを一生完全に禁止しなければならないわけではありません。
症状が強い時期は控え、落ち着いている時期は量やタイミングを調整する、という考え方が現実的です。
例えばコーヒーであれば、空腹時に濃いコーヒーを飲むと胃が痛くなる方もいます。
一方で、食後に少量なら問題ない方もいます。
医師と相談しながら、自分の胃に合った食べ方・飲み方を知ることが大切です。
塩分の多い食品は胃がんリスクの観点でも控えめに
慢性胃炎、特にピロリ菌感染や萎縮性胃炎が関係している場合は、胃がんのリスクにも注意が必要です。
国立がん研究センターは、胃がんの発生要因として、ピロリ菌への感染や喫煙習慣に加え、食塩・高塩分食品の摂取を挙げています。
さらに、国立がん研究センターの多目的コホート研究、JPHC Studyでは、1990年に岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県石川の4地域に住む40〜59歳の男女約4万人を対象に、食事や生活習慣を調査し、その後10年間追跡しました。
その結果、食塩摂取量が多い男性は特に胃がんのリスクが高く、塩辛、塩蔵魚卵、塩蔵魚介類など、塩分濃度の高い食品をよく食べる人も胃がんリスクが高い傾向が示されました。
そのため、漬物、塩辛、たらこ、いくら、塩鮭、干物などを毎日のように食べている方は、一度その習慣を見直してもよいかもしれません。
症状別|慢性胃炎の食事メニュー例

ここで紹介するメニューは、胃の調子が悪いときの一例です。
慢性胃炎だからといって、毎日この通りに食べる必要はありません。
具体的な食事メニューは、医師と相談の上で決定しましょう。
胃痛・吐き気がある日のメニュー
胃痛や吐き気がある日は、無理にたくさん食べる必要はありません。
量を少なめにし、温かくやわらかいものを選びましょう。
| 食事のタイミング | メニュー例 |
|---|---|
| 朝食 | おかゆ、豆腐の味噌汁、白湯 |
| 昼食 | 卵とじうどん、鶏むね肉と野菜の煮物、麦茶 |
| 夕食 | 軟飯、白身魚・大根・にんじんの蒸し物、味噌汁 |
| 間食 | バナナ、りんごのすりおろし、ヨーグルトなど ※ヨーグルトでお腹が張る方、下痢になる方は無理しなくてもよいです |
揚げ物、辛い料理、アルコール、炭酸飲料、濃いコーヒー、冷たい飲み物などは控えめにしましょう。
胃もたれが続く回復期のメニュー
胃痛や吐き気は落ち着いたものの、胃もたれが残る時期は、少しずつ通常の食事へ戻していきます。
| 食事のタイミング | メニュー例 |
|---|---|
| 朝食 | 卵とツナのサンドイッチ、バナナ、スープ |
| 昼食 | 鶏肉の雑炊、温野菜のサラダ |
| 夕食 | ご飯、豆腐ハンバーグ、かぼちゃの煮物、ほうれん草のおひたし |
| 間食 | きなこ牛乳、プリン、カステラ |
この段階で大切なのは、「胃にやさしいもの」だけに偏りすぎないことです。
魚、肉、卵、大豆製品、野菜を少しずつ取り入れ、体力を落とさないようにしましょう。
また、食べた後に胃もたれがする場合は、食品そのものよりも、量が多すぎる、早く食べすぎている、油を使いすぎている、といった要因が関係していることもあります。
コンビニ・外食で選ぶなら
忙しい日は、コンビニや外食を使っても構いません。選び方を少し工夫すれば、胃への負担を減らせます。
| シチュエーション | おすすめの食べ物 |
|---|---|
| コンビニ | 鮭や昆布のおにぎり、茶碗蒸し、豆腐、バナナ、具がシンプルなうどん、野菜スープなど |
| 外食 | うどん、魚がメインの定食、雑炊、湯豆腐、脂質の少ない和定食など |
揚げ物、辛いカップ麺、脂の多い弁当、濃いカフェラテ、炭酸飲料は、胃の調子が悪いときは控えめにしましょう。また、ラーメン、焼肉、カレー、揚げ物中心の定食、飲酒を伴う食事は、慢性胃炎の症状がある時期には胃の負担になりやすいでしょう。
ピロリ菌と食事の関係

慢性胃炎の約8~9割がヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)によるものとされています。
ピロリ菌は、胃の粘膜に住みつく細菌です。
ピロリ菌に感染している状態が続くと、慢性胃炎、萎縮性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍を発症したり、胃がんの発症リスクが高くなることがあります。
胃や腸の環境を整える食べ物として、ヨーグルトや乳酸菌が話題になることもありますが、食事や健康食品だけでピロリ菌を除菌することはできません。
ピロリ菌が疑われる場合は、医療機関で検査を受け、必要に応じて除菌治療を行う必要があります。
「胃に良い食事をしているから大丈夫」と考えてしまうと、検査や治療のタイミングが遅れることがあります。健診で慢性胃炎や萎縮性胃炎を指摘された方、家族に胃がんやピロリ菌感染の既往がある方は、一度相談するとよいでしょう。
慢性胃炎と栄養不足の関係

慢性胃炎では、胃の症状だけでなく、栄養の吸収にも注意が必要な場合があります。
イタリア・ローマのサピエンツァ大学とSant’Andrea Hospitalの研究者らは、2012年に医学誌Helicobacterで、ピロリ菌感染と微量栄養素に関するシステマティックレビューを発表しました。
この研究では、ピロリ菌への感染は、胃液中のビタミンC、血中のビタミンB12の低下と関連する可能性が示されました。また、除菌治療によって一部の栄養状態が改善する可能性も報告されています。
実際に、慢性胃炎(特にピロリ菌への感染や自己免疫性胃炎が関係する場合)は、貧血、鉄不足、ビタミンB12不足などが問題になることがあります。
疲れやすい、息切れがする、立ちくらみがある、舌がヒリヒリする、健診で貧血を指摘されたといった場合は、食事だけで対処せず、医療機関で相談しましょう。
食事で様子を見ず、受診を検討したい症状

胃の不調があると、まず食事を見直そうと考える方は多いでしょう。
軽い胃もたれや食べすぎによる不快感であれば、食事を整えることで改善することもあります。
しかし、次のような症状がある場合は、食事だけで様子を見続けないようにしましょう。
- 黒い便が出る
- 体重が減ってきた
- 強いみぞおちの痛みがある
- 吐き気があり食事を取れない
- 胃薬を飲んでも改善しない5
- 0歳以上で胃の不調が続く
- 健診で慢性胃炎や萎縮性胃炎を指摘された
- ピロリ菌検査で陽性と言われた
これらに当てはまる場合は、慢性胃炎だけではなく、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、胃がんなどが隠れている可能性もあります。
また、慢性胃炎は、症状の強さと胃粘膜の状態が必ずしも一致する訳ではありません。
症状が軽くても、胃の萎縮が進んでいることがあります。反対に、胃カメラで大きな異常がなくても、胃もたれや不快感が続くこともあります。
胃炎の原因を確認するためには、胃カメラ検査やピロリ菌検査が必要になることが多いです。
慢性胃炎の食事に関してよくある質問

Q1. 慢性胃炎のとき、ヨーグルトは食べてもいいですか?
A:食べて問題ない方もいますが、慢性胃炎の方全員にヨーグルトが合うわけではありません。
ヨーグルトで胃もたれやお腹の張り、下痢が出る方は無理に食べる必要はありません。
また、ヨーグルトだけでピロリ菌を除菌することはできません。
Q2. 慢性胃炎のとき、コーヒーはやめた方がいいですか?
A:胃の調子が悪い時期は、濃いコーヒーや空腹時のコーヒーを控えた方がよいでしょう。
ただし、症状が落ち着いており、少量を飲んでも不調が出ない場合は、必ずしも完全に禁止する必要はありません。
Q3. 慢性胃炎にキャベツは良いですか?
A:キャベツは胃にやさしい食品として知られていますが、キャベツだけで慢性胃炎が治るわけではありません。
生で食べると胃が張る方もいるため、熱して少量から取り入れるとよいでしょう。
Q4. 慢性胃炎の食事療法は何日くらい続ければいいですか?
A:胃痛や吐き気が強い時期は、数日ほど消化のよい食事に寄せると過ごしやすいことがあります。
症状が落ち着いてきたら、医師と相談の上で少しずつ通常の食事に戻しましょう。長期間、おかゆやうどんだけにする必要はありません。
Q5. ピロリ菌除菌中に食べてはいけないものはありますか?
A:基本的には医師や薬剤師の指示に従いましょう。
除菌中は胃腸の不調が出ることがあるため、脂っこい食事やアルコールは控えめにした方が過ごしやすいでしょう。
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慢性胃炎の食事では、胃に負担をかけにくい食品を選び、食べすぎや早食いなどの習慣を改めることが大切です。
ただし、食事を整えて症状が軽くなっても、慢性胃炎が改善したとは限りません。
特にピロリ菌に感染している場合は、食事だけで除菌をすることはできません。
慢性胃炎の原因を確認し、将来の胃がんリスクも含めて管理するためには、必要に応じて胃カメラ検査やピロリ菌検査を受けることが大切です。
江東区・亀戸・錦糸町周辺で、胃もたれ、胃痛、胸やけ、吐き気が続く方、健診で慢性胃炎や萎縮性胃炎を指摘された方、ピロリ菌が気になる方は、アクアメディカルクリニックへご相談ください。
当院では、慢性胃炎の診療・治療、胃カメラ検査、ピロリ菌検査・除菌治療に対応しています。
食事の見直しだけでよいのか、検査が必要な状態なのかを一緒に確認していきましょう。
参照
- NIDDK:Gastritis & Gastropathy
- NIDDK:Eating, Diet, & Nutrition for Gastritis & Gastropathy
- 日本ヘリコバクター学会:ガイドライン
- Association of Symptoms with Eating Habits and Food Preferences in Chronic Gastritis Patients
- 国立がん研究センター:胃がん 予防・検診
- 国立がん研究センター:食塩・塩蔵食品摂取と胃がんとの関連
- Use of food and food-derived products in the treatment of gastritis: A systematic review
- Probiotics supplementation and H. pylori standard treatment: umbrella review
- Micronutrients and Helicobacter pylori infection: systematic review
