
「健康診断で慢性胃炎かもしれないと言われたけれど、胃は痛くない」「食事に気をつけているのに、毎年同じ指摘を受ける」。このような経験はありませんか。
慢性胃炎の代表的な原因は、ピロリ菌の持続感染です。
そのほか、免疫の異常による胃炎や、痛み止めなどによる胃粘膜障害が関係する場合もあり、食べ過ぎやストレスだけでは、原因を説明できないこともあります。
原因を考えるうえで大切なのは、胃の粘膜に起きている変化と、胃痛・胃もたれなどの症状を分けて捉えることです。
この記事では、慢性胃炎の主な原因と、その原因を調べるための検査について解説します。
過去の健診結果やピロリ菌検査、普段使っている薬などを思い出しながら、ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
そもそも慢性胃炎とは?

胃の内側は、食べ物や胃酸に接する「胃粘膜」で覆われています。
慢性胃炎は、この胃粘膜に慢性的な炎症が起きている状態です。
医学的には、胃粘膜の組織に炎症細胞が集まっていることなどから「慢性胃炎」と評価します。
一方、実際の診療では、胃カメラで見える発赤や萎縮などの変化をもとに「慢性胃炎」と説明されることもあります。
ただし、胃粘膜の炎症と、本人が感じる症状は必ずしも一致しません。
胃炎があってもほとんど症状がない方もいれば、目立つ胃炎がなくても胃の不快な症状に悩む方もいます。
また、慢性胃炎の状態が長く続くと、胃酸などの分泌を担う「胃の腺」が失われる「萎縮性胃炎」などを引き起こす可能性があります。
慢性胃炎の症状や病気全体については、こちらのページもご覧ください。
▷慢性胃炎
慢性胃炎の主な原因

慢性胃炎の原因として、まず確認したいのがピロリ菌感染です。
感染が見つからない場合には、薬剤や生活習慣の影響、自己免疫性胃炎などの可能性を考えます。
また、胃炎と説明される胃の変化には、薬剤や胆汁などによる胃粘膜障害が含まれることもあります。主な原因・要因と、調べる手がかりを整理すると次のようになります。
| 主な原因・要因 | 胃に起こる変化 | 確認する手がかり |
|---|---|---|
| ピロリ菌の持続感染 | 胃粘膜に炎症が続き、一部では萎縮などが進みます。 | 感染検査、過去の除菌歴、胃粘膜の所見。 |
| 自己免疫性胃炎 | 免疫が胃の壁細胞などを攻撃し、胃体部を中心に萎縮が進みます。 | 萎縮の分布、鉄・ビタミンB12欠乏、胃に対する自己抗体。 |
| 薬剤による胃粘膜障害 | 胃粘膜を守る仕組みなどが損なわれ、びらんや潰瘍が生じる場合があります。 | 痛み止め・アスピリンなどの使用歴、服用と症状の時間的な関係。 |
| 胆汁逆流 | 十二指腸から逆流した胆汁が、胃粘膜への刺激になる場合があります。 | 胃の手術歴、症状、内視鏡・組織所見。 |
| 過度の飲酒 | 胃粘膜が傷つき、特に多量摂取では急性の胃粘膜障害が起こる場合があります。 | 飲酒量、症状の経過、胃粘膜の所見。 |
| その他のまれな原因 | 特殊な胃炎や、ピロリ菌以外の感染症などが関係します。 | 特徴的な内視鏡所見、生検、基礎疾患など。 |
これらは、一つの検査や症状だけで見分けられるものではありません。
複数の要因が重なる場合もあるため、胃粘膜の状態、病歴、服薬歴などを合わせて判断します。
原因① ピロリ菌の持続感染
ピロリ菌は、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」と呼ばれる細菌です。
慢性胃炎の代表的な原因で、胃粘膜に長く住み続けることで炎症を起こします。
ピロリ菌による慢性胃炎を放置すると、胃の粘膜が萎縮する「萎縮性胃炎」や、胃の粘膜が小腸や大腸と似た性質の粘膜に変化する「腸上皮化生」を引き起こす可能性があります。
ピロリ菌への感染は口から起こり、特に乳幼児期に成立しやすいと考えられています。
日本ヘリコバクター学会は、家庭内感染や環境を介した感染など、複数の経路が考えられると説明しています。
なお、成人になってからの新たな感染は、乳幼児期と比べてまれです。
例えば、40代で初めてピロリ菌陽性と分かっても、40代になってから感染したとは限りません。
子どもの頃に感染し、自覚症状がないまま長く胃に住み続けていた可能性があります。
ピロリ菌について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
▷ピロリ菌の原因|食べ物やストレスは関係ない?
▷胃の炎症「慢性胃炎」はピロリ菌がいなくても発症するのか
▷ピロリ菌検査
原因② 自己免疫性胃炎
自己免疫性胃炎は、自分の体を守る免疫が、胃の「壁細胞」などを攻撃してしまう病気です。
胃体部から胃底部にかけて、萎縮が目立つことが特徴です。
壁細胞は、胃酸と「内因子」という物質を作っています。
内因子は、ビタミンB12を体に取り込むために必要です。
壁細胞の障害が進むと、胃酸や内因子が減り、栄養素の吸収に影響を及ぼします。
診断では、胃カメラや病理検査の所見に加え、抗壁細胞抗体・抗内因子抗体などを組み合わせて評価します。
また、胃酸が少なくなると鉄の吸収に影響するため、ビタミンB12欠乏に先立って、鉄欠乏が問題になることがあります。
例えば、「鉄不足を繰り返している」「貧血の原因が分からない」という場合には、胃の状態が確認事項の一つになることがあります。
原因③ 薬剤による胃粘膜障害
頭痛、腰痛、関節痛などで使う痛み止めが、慢性胃炎などの胃粘膜障害の原因になることがあります。
代表的なのは、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」です。
血栓を防ぐ目的などで使用する低用量アスピリンも、胃粘膜障害に関係します。
これらの薬を服用すると、胃粘膜を守る「プロスタグランジン」という物質の産生が抑えられ、胃の防御が弱くなります。
その結果、胃が傷つきやすくなり慢性胃炎を引き起こすことがあります。
また、酸性のNSAIDsが胃粘膜の細胞に蓄積することで、胃が炎症を起こすこともあります。
なお、処方薬は自己判断で中止せず、処方した医師に相談してください。
特にアスピリンなどは、服用を続ける目的も考慮して対応を決める必要があります。
原因④ 胆汁逆流による胃粘膜障害
胆汁は、脂肪の消化を助ける液体で、通常は十二指腸に流れ込みます。
この胆汁が胃に逆流し、胃粘膜への刺激になる場合があります。
特に胃の一部を切除する手術などを受けた方は、胆汁の逆流が起こりやすい傾向です。
ただし、胃カメラで胆汁が見えたことだけで、胃の不調の原因を確定することはできません。
胃の手術歴があるか、どのような症状が続いているか、胃粘膜にどのような変化があるかなどを合わせて考えます。
原因⑤ 過度の飲酒による胃粘膜障害
アルコールは、胃粘膜を傷つける要因の一つです。
特に多量の飲酒が習慣になっている方は、胃粘膜の表面が傷つく「びらん」を伴った、急性の胃粘膜障害を起こすことがあります。
ただし、飲酒習慣がある方の胃炎が、すべてアルコールによるものとは限りません。
ピロリ菌感染や薬剤など、ほかの要因が重なっている場合もあります。
また、暴飲暴食・脂っこい食事・刺激物のとり過ぎ・過度の飲酒・喫煙・不規則な生活なども、胃に負担をかけます。
食生活や生活習慣の乱れは、慢性胃炎の直接的な原因とは言えませんが、すでに炎症が起こった胃には大きな負担となり、症状を悪化させやすくなります。
原因⑥ 特殊な胃炎や、ピロリ菌以外の感染症
頻度は高くありませんが、好酸球性胃炎、リンパ球性胃炎、クローン病に関連する胃炎など、特殊なタイプの胃炎もあります。
特に免疫力が低下している方では、ピロリ菌以外の細菌やウイルスなどによる感染が問題になる場合もあります。
慢性胃炎の原因を調べる方法

慢性胃炎の原因を調べるときは、現在の症状に加えて、過去の検査や治療の情報が役立ちます。
受診前に、次の内容を整理しておくと相談が進めやすくなります。
- 慢性胃炎を指摘された検査の種類と時期
- 過去のピロリ菌検査結果
- ピロリ菌の除菌治療を受けた時期と、除菌判定の結果
- 処方薬、市販薬、サプリメントの名前と使用頻度
- 胃の手術歴、貧血、自己免疫疾患の有無
胃カメラ・ピロリ菌検査・生検の役割役割
診察では、病歴や服薬歴を確認しつつ、必要に応じて胃カメラ、生検、血液検査などを組み合わた検査を行います。
| 検査・確認事項 | 主に分かること | 結果を見るときの注意点 |
|---|---|---|
| 胃カメラ | 発赤、萎縮、びらん、潰瘍などの分布や程度。 | 見た目の情報に加え、感染検査や生検などが必要になる場合があります。 |
| 尿素呼気試験・便中抗原検査 | 現在のピロリ菌感染の評価、除菌後の判定。 | 検査方法、使用薬、治療からの経過期間を考慮します。 |
| 血液・尿のピロリ菌抗体検査 | ピロリ菌に対する体の免疫反応。 | 除菌後も陽性が続くことがあり、現在の感染だけを示すものではありません。 |
| 生検・病理検査 | 炎症細胞、胃の腺の萎縮、腸上皮化生、特殊な胃炎など。 | 採取する部位や、内視鏡・血液検査などの情報と合わせて評価します。 |
| 必要に応じた血液検査 | 貧血、鉄・ビタミンB12欠乏、胃に対する自己抗体など。 | 全員に同じ項目を調べるわけではなく、疑う原因に応じて選択します。 |
検査には、それぞれ役割と限界があります。
一つの検査結果を切り取らず、胃粘膜の所見や病歴と合わせて解釈することが大切です。
慢性胃炎の原因が分かった後に大切なこと

ここからは、慢性胃炎の原因が分かった後に大切なことを、それぞれの原因ごとに見ていきましょう。
ピロリ菌感染の場合:除菌と胃粘膜の状態に応じた経過観察を行う
ピロリ菌感染による慢性胃炎の場合は、ピロリ菌の除菌治療を行います。
また必要に応じて、胃粘膜の状態も確認します。
除菌の必要性に疑問がある方は、こちらのページをご覧ください。
▷「ピロリ菌は除菌しない方がいい」はウソ?感染を放置するとどうなる?
自己免疫性胃炎の場合:貧血や栄養素の不足も確認
自己免疫性胃炎では、胃の状態に加え、鉄やビタミンB12の不足を確認することが重要です。
また、胃酸が減ると、胃酸分泌を促すホルモン「ガストリン」が増えることがあります。
この変化に関連して胃神経内分泌腫瘍が生じる場合もあるため、胃粘膜の状態も確認します。
薬剤による胃粘膜障害の場合:服薬の必要性も含めて対応を考える
痛み止めなどによる胃粘膜障害では、薬を使う必要性・種類や量を見直したり、胃を保護する治療などを検討します。
薬の調整は、治療している病気への影響も考えて行います。
胃の不調がある場合は、市販薬も含めて医師や薬剤師に相談してください。
原因ごとの治療については、こちらのページをご覧ください。
▷慢性胃炎の治し方|原因別の方法と受診目安を解説
多量の飲酒による胃粘膜障害の場合:飲酒習慣の見直し
多量の飲酒による胃粘膜障害の場合は、まずは飲酒習慣を見直します。
併せて、食生活の乱れや喫煙、不規則な生活リズムなども改善を行います。
慢性胃炎を発症しているときの食事については、こちらのページをご覧ください。
▷【慢性胃炎の食事】食べやすいもの・避けたいもの・胃にやさしいメニューを解説
慢性胃炎で医療機関の受診を検討したいケース

以下に当てはまる方は、医療機関の受診をご検討ください。
- 健康診断で慢性胃炎や萎縮性胃炎を指摘された
- 胃痛・胃もたれ・吐き気などが続く、または繰り返す
- 市販の胃薬で一時的に楽になっても、不調が再発する
- ピロリ菌検査を受けたことがない、または過去の結果が分からない
- ピロリ菌の除菌治療後に、除菌判定の検査を受けていない
- 痛み止めなどを継続して使用しており、胃の不調がある
健診で慢性胃炎や萎縮性胃炎を指摘された場合は、まず結果票の判定と、過去の検査歴を確認してください。
健診後の対応は、こちらのページでも解説しています。
▷健康診断で慢性胃炎と診断されたら|ピロリ菌検査・胃カメラの必要性
早急な受診が必要なケース
- 血やコーヒーかすのようなものを吐く
- 黒く、粘り気のある便が出る
- 吐血や黒い便に加えて、ふらつきや息切れなどがある
このような場合は、通常の外来予約を待たず、速やかに医療機関へ連絡してください。
慢性胃炎の原因について、よくある質問

Q1:暴飲暴食をしていなくても、慢性胃炎になりますか?
A:はい。ピロリ菌の持続感染や自己免疫性胃炎など、現在の食生活だけでは説明できない原因があります。
食生活を整えることは大切ですが、食事に気をつけていることと、感染などがないことは別に考えます。
Q2:慢性胃炎は、家族からうつったり遺伝したりしますか?
A:基本的には周囲の人にうつったり遺伝したりすることはありません。
ただしピロリ菌は家庭内感染が起こった可能性があるため、注意が必要です。
Q3:胃が痛くないのに慢性胃炎と言われるのは、なぜですか?
A:胃粘膜の変化と、痛みの有無が必ずしも一致しないためです。
症状がなくても炎症や萎縮が見つかることがあります。反対に、胃粘膜に目立つ変化がなくても、胃の働きや刺激の感じ方に関連して不調が続く場合があります。
江東区・押上・亀戸周辺で、慢性胃炎の原因を相談したい方はアクアメディカルクリニックへ

慢性胃炎の原因には、ピロリ菌感染や自己免疫の異常などがあり、薬による胃粘膜障害が関係することもあります。症状だけで原因を判断することは難しく、健診で慢性胃炎の可能性を指摘された場合や胃の不調を繰り返す場合は、一度医療機関で胃の状態を確認することが大切です。
アクアメディカルクリニックでは、症状や服薬歴、過去の検査結果を確認し、必要に応じて胃カメラやピロリ菌検査を検討します。
以前の検査結果が分からない方や、除菌後も胃の不調が続く方もご相談ください。検査の必要性や今後の経過観察についても、ご自身の状況に合わせて確認していきます。
「胃が痛くないので受診すべきか迷う」「毎年同じ指摘を受けているけれど、何をすればよいか分からない」といったご相談もお待ちしております。
健診結果の内容やこれまでの経過を整理し、必要な対応を一緒に考えていきます。
